御殿場 基礎科学研究会 (Gotemba Theoretical Science Research) 本文へジャンプ
集中講義

2010年10月2日-3日
情報幾何学への力学的アプローチについて
◇講義概要
    情報幾何学とは統計学や情報理論などにおいてモデルの空間から真の分布を
    探るときに現れる確率分布の族に対して Fisher 情報行列をRiemann 計量とする
    Riemann 多様体として微分幾何学的に研究する分野であるが、これにより統計的
    推定論や情報・通信理論、最適化問題や学習理論、脳科学など多くの分野を
    統一的に扱う事が出来、様々に応用されている。このとき使用する微分幾何学的
    手法としてはアフィン微分幾何学であるが、解析力学に源流を持つシンプレクティック
    幾何学とも情報幾何学は相性が良い。例えば以下の事がわかる:ダイバージェンス
    により統計モデルの空間の直積(2乗)上にはシンプレクティック構造が定まり、特に
    双対平坦空間に対しては余接束上の正準2形式より定まる構造が自然に誘導される。
    統計モデル(特に双対平坦空間)上に自然に定まる接続は Fisher 計量の Levi-Civita
    接続ではなく、捩れの無いアフィン接続(の族)であるが、シンプレクティック構造に話を
    移す事で、これらはシンプレクティック構造を保つ接続となる。e-,m-測地線は Hamilton 流
    として与えられる。更にこれらはノンパラメトリックの場合にも機能する。

    本講義では情報幾何学、特に双対平坦空間における双対座標系やダイバージェンス、
    測地線などと力学的対象との関係を、線型代数学と微分積分学、解析力学と熱力学
    (など教養レベル)程度の予備知識のみを仮定して、解説する事を目的とする。

◇講師
    野田知宣氏(大阪歯科大学)

◇日時 (時間については若干の変更の可能性あり)
  2010年10月2日(土) 講義 13:15~16:30,懇親会 17:15~20:15
  2010年10月3日(日) 講義 10:00~12:00, 13:30~15:30

◇場所
    御殿場市民交流センター ふじざくら

◇参加者募集
    院生,ポスドク,大学職員,会社員など,
    どなたでも気軽にご参加ください.
    
    申し込み締切: 講義:   2010年10月1日(金)
              懇親会: 2010年9月24日(金)

    参加希望者は,下記のメールアドレスまでご連絡下さい.

    連絡先: 御殿場基礎科学研究会 事務局
          kisoken at kisoken.eess.org (*)at は@に変えてください.

◇費用
    ◇参加費(資料代等)
       社会人          : 1500円
       学生(コースDまで)  : 1000円

◇本講義の開催にあたって
【御殿場基礎科学研究会のビジョン】
何らかのデータをもとに、これを発生したメカニズムを探ろうとする探索的研究にはじまり、仮説を設定し、背景理論に基づくモデルを通して現象生成のメカニズムの理解及び検証を行うという手続きはあたりまえのこととして行われてきた。背景理論や観測手段が現象に対して有効であれば、現象を説明する変数の数を抑えることができ、また、変数間の関係も比較的単純なモデルで表現できる。しかしながら場合によっては、複数の要因が絡み合い、また、入出力関係に複雑な帰還がある事象においては背景理論の適用上の限界がある。

ところが最近、「学習機械」と呼ばれる帰納的な推論機械の研究が発達してきた。従来、人間が行うべき仕事と考えられてきた仮説の設定と選択が、ある意味で自動化可能となったと考えることができる。例えば、可能な限り考えられる変数を人が洗い出し、機械処理してしまえば、統計的に有効な変数を自動的に抽出でき、状態予測や判別まで実行可能となる。一見、大変便利な方法に思えるが、結果が良ければメカニズムなどどうでも良い訳ではなく、機械自体の設計や性能について深い理解が必要となる。

この機械設計の指針や性質を記述する言語の一つとして情報幾何がある。ラフに言ってしまえば機械機能を幾何概念に置き換えて、幾何的直感を働かせ機能設計を行うイメージ。具体例で言えば、システムや物理現象の特性を分析するためのパラメトリックな解析手法として、自己回帰移動平均モデル(ARMA model)がある。このモデルは外部からの力が作用している質量・バネ・ダンパシステムの伝達関数の離散化によって得ることが出来、また線形制御システムの状態空間システムとして表現することも出来るので制御理論との相性も良い。ARMAモデルはそのパラメータによってシステム特性が決まるが、このパラメータが動く空間上でARMAモデル固有の幾何構造(計量など)を考え、モデル簡約、モデル近似、システム同定などを検討することができる。また、ARMAモデルのダイバージェンス(相対エントロピー)から構成されるシンプレクティック構造によるハミルトン力学はこれから応用が広がるのではないかと考えている。


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